会長挨拶
第11回日本筋学会学術集会
会長 青木 正志
東北大学 神経内科学
この度2025年8 月22 日(金)、23 日(土)に東北大学星陵キャンパスにおいて開催される第11 回日本筋学会を担当させていただくことになりました。
筋学(Myology)は筋および関連する筋膜、腱、腱膜、滑液包について研究する学問です。日本筋学会は「わが国における骨格筋生物学研究に関する統一的な組織を構築し、次世代の研究者を積極的に支援する場を設立すること」を目的として、2015 年に設立されました。2024年9月12-15日には国立精神・神経医療研究センターの西野一三会長のもと、第10回学術集会がAsian and Oceanian Myology Center (AOMC)との合同学会として開催されます。
自己免疫疾患である筋炎の多くの自己抗体が発見され、免疫学的治療が展開されております。さらに、近年世界的に社会の高齢化が大きな問題となり、高齢者における筋減少症であるサルコペニアやフレイル、そして運動器機能障害であるロコモティブシンドロームなど新たな疾患概念の登場とともに、研究領域も大きな広がりを見せています。これらの疾患は要介護の主要な原因となり、高齢者の生命予後やADLを低下させるため、その対策が急務であると考えられていますが、これら疾患対策のために筋研究が大きな役割を担うことが期待されています。また希少難治性筋疾患の領域に目を転じると遠位型ミオパチー(GNEミオパチー)に対する新薬が承認され、患者の生活の質を大きく向上させることが期待されています。さらにエクソンスキッピング治療の技術も大きな進展を遂げ、デュシャンヌ型筋ジストロフィーなどの遺伝性筋疾患に対する新たな治療法として注目を集めています。これらの先進的な治療法は、筋疾患治療の新しい可能性を切り拓くものです。
このような背景から本学会のテーマは “病態研究から拓く筋疾患治療の新時代”といたしました。2024年はAOMCと合同の国際学会でしたが、2025年は会場を仙台に移し、学生を含む若手の研究者に発表の場を多く設けるつもりです。本学会が、筋領域の基礎研究者のみならず、脳神経内科学、小児神経学、代謝内分泌学、整形外科学、リハビリテーション医学、医工学など多くの研究者および臨床家の活発な交流の場となれば幸いです。