会長挨拶
第62回日本消化器がん検診学会総会
会長 加藤 勝章
(公財)宮城県対がん協会がん検診センター
この度、第62回日本消化器がん検診学会総会会長を拝命いたしました(公財)宮城県対がん協会がん検診センターの加藤勝章です。仙台での本学会総会の開催は、2013年6月の第52回総会(会長:渋谷大助先生)以来10年ぶりとなります。新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴い、過去3回の総会(第59回総会:松浦隆志会長、第60回総会:小川眞広会長、第61回総会:中島滋美会長)は完全web開催となりましたが、この度は現地開催とオンライン配信によるハイブリッド形式での開催を目指しております。ハイブリッドとはいえ現地開催は3年ぶりでございます。準備の都合上、現地会場は少しコンパクトになりますが、これまで同様に多くの皆様のご参集をお待ちしております。
さて、第62回総会のテーマは「集団のパラダイムシフト―効率的で効果的な消化器がん対策を目指して-」とさせていただきました。従来、がん検診は一定年齢以上の者を対象に一律に検診が提供されてきました。しかしながら、がんのリスクが高い集団と低い集団とでは検診によって得られる利益・不利益が異なるため、従来通りの検診提供体制では低リスク群における検診効果の目減りや不利益の増大などといった問題が生じる可能性が危惧されます。そこで、近年、対象者のリスクに応じたがん検診のあり方や対策型がん検診に応用可能なリスク評価方法、その科学的根拠について模索されるようになってきました。
今般のコロナ・パンデミックでは、人が集まる・集めることが感染リスクに繋がるとして人々の行動変容が求められました。がん検診における集団の捉え方についてもパラダイムシフトが起きつつあります。従来のように単に大勢の人を集めて検査をすれば良いというのではなく、がんのリスクや利益・不利益を考慮して、必要な方が必要な検診を適切に受けていただける体制を作っていく必要があると考えます。新たに導入された胃内視鏡検診や今後対策型への導入が視野に入っている大腸内視鏡検診などは、精度は高いけれども検査負荷が大きく、また、検査のキャパシティーに問題を抱えており、効率的かつ効果的な対象集団の設定や実施体制の構築が必要になるであろうと考えます。さらに、受診者に対しては、科学的根拠に基づいて、受診者自身が必要かつ適切ながん検診を正しく選択できるように支援するためのShared Decision Making(SDM:共有意志決定)の仕組みについても議論を進め、ヘルスリテラシーの向上に努めて行く必要があると考えます。
本総会では、効率的で効果的な消化器がん対策を目指して、消化器がん検診についていろいろな観点から活発に御議論いただければと願っております。
多数の演題応募と総会へのご参加をお待ちしております。